上野駅前から浅草へ向かう浅草通りの整備事業 ―歩道拡幅、自転車道新設、統一街路樹(サルスベリ)の植樹など― は、いま、東京都(第六建設事務所)により進められているところだが、一昨年夏頃、計画を知った沿道の東上野6-1-3、和紙問屋(株)東京松屋の伴充弘社長は、同社前歩道に育っているクスノキも他の植物同様、伐採されることを知って、クスノキと周辺の緑の保存のお願いを、1,000名からの近隣の署名を添えて台東区に嘆願した。
この騒ぎを知って、東日本復興途上にある仙台のさる神社境内への移植話も出たが、クスノキは関東以北では育たないということから断念。「移植経費は一切負担するから、このクスノキだけは切らないでどこか他の適切なところに移植して・・・」と途方にくれているところへ、同じ沿道の仏壇・仏具の翠雲堂本店の紹介で、調布市西つつじヶ丘の金龍寺境内に移植されることになって伴社長もホッと。作業は3月29日の夜中から始まり、隣接のクスノキ、附近のキンモクセイ、アジサイ、ライラックなども一緒に、30日早朝、金龍寺の庭に無事植え替えられた。
なにしろ、何10年も手塩にかけて育ってきているだけに愛惜の念は深いものがあり、伴社長は「ご縁をいただいたお寺は幼稚園もある広いお寺さんで、これから永く育てていただきたい・・・」とクスノキの成長を願っている。
台東区民新聞 平成25年(2013年)4月20日(土) 掲載記事 |